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僕と彼女
自宅近くにある小高い丘の上、僕のお気に入りの場所。
ここから見える星空は最高に美しい。
僕は毎週水曜日と日曜日、双眼鏡を持ってやって来る。毎日来たいというのが本音だが、平日は水曜以外は塾、土曜日は、天体望遠鏡を買うためにファミレスで22時までバイトをしてるので、ここに来ることは難しい。
年が明けた水曜日、冬の冷たい空気を頬に感じながら、ダッフルコートに身を包み、今日も僕はやって来た。
冬空を見上げ星を観察する。肉眼では見えない無数の星も、双眼鏡を使うことによりその姿をはっきりと見ることができる。やや青く光ったり、赤っぽく光ったりといった色も確認することができる。
「はぁ〜 キレイだなぁ」
彼女に声をかけられたのは、宝石のような星空に見惚れ、うっとりしている時だった。
「ねぇ、何してるの?」
「えっ⁉︎」
突然声をかけられた僕は、ビクッとし、落としそうになった双眼鏡を慌ててキャッチした。
すぐに声のした方へ視線をやる。
モフモフの白いコートに、真っ赤なマフラーを巻いた、ちょっと細身の奇麗な女子が僕を見据えている。
僕?の意味を込めて、自分を指差すと、彼女は大きく頷いた。
段々僕に近づいて来る。至近距離までやって来ると、満面の笑みを僕に向けた。
僕の心臓が大きく脈打つ。その姿はまさしく、光り輝く一等星。
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