23人が本棚に入れています
本棚に追加
日曜日、僕は早めにやって来た。
少しだけおしゃれもしてみた。
いつもは近所の床屋でサッと切ってもらう髪も、今日は美容室で整えてもらった。
早く来ないかなぁ。
彼女を想いながら星を眺めていると、
「光くん」
待ちに待った声が僕を呼んだ。
佇むその姿は、相変わらずキラキラと輝いていている。
「晴れてよかったね」
僕の傍に来て微笑む彼女にドキッとする。
「私、てるてる坊主作ったのよ。雨が降ったら光くんに会えないし、星も見えないから」
可愛い、可愛すぎる。
てるてる坊主を作ってまで、僕に会いたいと思ってくれていたということ?
舞い上がってしまいそうな感情を必死に抑えた。
「ねぇ、光くん」
「何?」
「星のこと、詳しいの?」
「少しだけ」
「私に教えてくれる?」
「うん」
「私、オリオン座くらいしか知らないの。あれでしょう?」
彼女が指差した先にはオリオン座が輝いている。
「うん、そうだよ」
「オリオン座って冬の星座なんだよね?」
「うん、ほら、オリオン座の左上の方、あそこに凄く光ってる星があるでしょう。わかる?」
「うん」
「これで見てみて」
僕は双眼鏡を手渡した。
「この星、昨日私が見た星だ。赤く光ってる星」
「その星はベテルギウスっていって、冬の大三角形の星の一つなんだよ」
「冬の大三角形、聞いたことある!じゃあ、三角だから、あと二つ星があるってことだよね?」
「うん、そう」
「あと二つはどれ?」
「べテルギウスの下の方に強く光ってる星があるでしょう?」
「うん!青白っぽく光ってる。強く光ってる」
「その星はシリウスっていうんだ」
「シリウス、聞いたことある!あの星がそうなんだ」
「そして、シリウスの上の方に向かって、ベテルギウスと三角線を結ぶように見ていくと、白っぽく光る星が見えない?」
「あっ、あった!白く光ってる」
「その星はプロキオンっていうんだ」
「赤、青、白、だね。ベテルギウス、シリウス、プロキオン!」
「うん」
「うわぁ、私、なんだかちょっとだけ賢くなったみたい」
目を輝かせながら話す彼女は、僕にとっては一等星の何者でもない。
最初のコメントを投稿しよう!