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うちにあそびにきていたネコが、あるひ、こなくなった。
ぼくがだいすきだったネコ。どこでどうしているのかな? ちゃんとごはんたべてるかな?
まどからつきがみえるよぞらをみあげてネコのことをかんがえる。
ベッドにはいってねようとしたら、まどから、ちいさなひかりのたまが、へやにはいってきた。
ひかりのたまは、おばけのようだった。
ぼくは、おきあがって、にげようとした。
ぼくはおばけがだいきらいなんだ。
ひかりのたまは、ぼくをおいかけてくる。
「こっちにこないでよ。ぼく、きみのことがだいきらいなんだ」
ぼくはベッドのしたにかくれた。
ここならひとあんしん。
なのに、ひかりのたまもベッドのしたまでおってきた。
ネコがはねるようなうごきで。
あまえるようにぼくのまわりをとびまわる。
そういえば、いたずらしておかあさんにしかられたとき、あのネコといっしょにベッドのしたにかくれたっけ。かいちゅうでんとうであかりをつけて。
あのネコ、いまなにをしてるのかな。
ぼくはベッドのしたからでた。とにかくこのおばけからにげなくちゃ。
すると、ひかりのたまもベッドのしたからでてきた。
ひかりのたまはぼくをおいかけてくる。
「こっちにこないでよ。ぼく、きみのことがだいきらいなんだ」
ぼくはクローゼットのなかにかくれた。
ここならひとあんしん。
なのに、ひかりのたまもクローゼットのなかに入ってきた。
ネコがはねるようなうごきで。
あまえるようにぼくのまわりをとびまわる。
そういえば、このクローゼットをひみつきちにしてあそんでいたときも、あのネコをだきしめていたっけ。いっしょにこっそりおやつをたべて。
あのネコ、いまなにをしてるのかな。
ぼくはクローゼットからでた。とにかくこのおばけからにげなくちゃ。
すると、ひかりのたまもクローゼットからでてきた。
ひかりのたまはぼくをおいかけてくる。
「こっちにこないでよ。ぼく、きみのことがだいきらいなんだ」
ぼくはへやをでて、おとうさんとおかあさんがねているへやににげた。
「たいへんだ、おばけがでたんだよ」
ぼくがさけぶとふたりがおきてくれた。
ここならひとあんしん。
なのに、ひかりのたまもこのへやまではいってきた。
ネコがはねるようなうごきで。
おとうさんとおかあさんのまわりをたのしそうにとびまわってる。
そういえば、あのネコ、おとうさんとおかあさんのしんしつにもはいって、おおきなベッドのうえでまるまってたっけ。みんなで、ねてるネコをやさしくなでたんだ。
あのネコ、いまなにをしてるのかな。
「こっちにこないでよ。おばけなんて、みんなだいきらいなんだ」
おとうさんとおかあさんはほうきをもって、おいはらおうとした。
すると、とびまわっていたひかりのたまは、げんきをなくしたように、ゆかにおりて、へやをでていった。
なんだか、そのようすが、とてもとてもさびしそうだった。
ぼくたちはひかりのたまのことがきになって、そっとあとをおっていった。
ひかりのたまは、キッチンにはいっていった。
ぼくたちがキッチンをのぞいてみると、
ひかりのたまは、キャットフードをたべていた。
あのネコがすきだったキャットフードだ。
あのネコとたべかたがそっくりだった。うれしそうにたべている。
ひかりのたまは、こっちにきづくと、「ニャア」とないた。
それから、リビングのほうににげていってしまった。
ぼくたちもあとをおった。
ひかりのたまはネズミのおもちゃであそんでいた。
あのネコがすきだったおもちゃだ。ぼくたちいっしょにいっぱいあそんだんだ。
ぼくがちかづいていくと、ひかりのたまは「ニャア」とないた。
にげずに、ほんもののネコのようにじっとすわっていた。
「にげなくていいよ」
ぼくはてをのばした。
「ぼくもにげないから」
ぼくがひかりのたまをだきしめると、うれしそうに「ニャア」とないた。
「ぼく、きみのこと、だいすきだよ」
ひかりのたまは、ぼくのむねのなかでまたニャアとないて、こまかなひかりのつぶになった。
それから、ひかりのつぶは、まどのそとのつきにむかってとんで、きえていった。
「きらいだなんていってごめんね。きみもぼくたちのたいせつなかぞくだったよ」
おわり
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