1765人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
すると、男の大きなため息が聞こえてきた。
「どう考えてもふざけてるだろ」
そして、再びため息をついた。
「俺から見たら、アンタの方が“空き巣”なんだけど」
「空き巣……？」
全く予想していない言葉に顔を覆っていた手のひらが力なく崩れ落ちた。
露わになった晴の顔を見つめて男は言った。
「アンタこそ誰なんだよ？」
この時、晴は気がついた。男が自分を見る目は、脅かすというより不審がっているように見えた。
最初は何を言われているのか全く意味がわからなかったが、彼にとっては自分の方が“不審者”であるらしいことを晴は察し始めた。
「誰って……ここの…住人ですけど……。 あなたは……？」
晴は相手が話の通じる人間か見定めながら、相手をできるだけ刺激しないように恐る恐る口を開いた。
「……住人？ 意味わかんねえし。ここ、俺の家なんだけど」
最初のコメントを投稿しよう！