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この言葉で恐怖は瞬く間に混乱に変わった。
「え?」
次の言葉を発するまでに少し時間がかかった。
聞き間違いか、幻聴か、もしくはまだ完全に起きられていないが故に夢を見ているのか分からなくなった。
しかし、夢にしては自分の激しい動悸がリアル過ぎた。
手のひらには汗もかいている。念の為に頬をつねってみたが……しっかりと痛い。
まさしくこれは現実だ。
「えっと……今……なんて言った? “俺の家”って……聞こえた気がしたけど……違うよね? まさかね、違うよね?」
唇がかろうじて動き、力のない唇の端から思わず乾いた笑いがもれた。
だってそう、何を言われたのかわからない。
相手に問いかけておきながら、半分は自分に言い聞かせていたのでつい軽い口調になった。とても冷静になどしゃべれなかった。
もちろん晴はイエスの答えを待ったが相手からはノーの意味で即答された。
「だる……。言ったけど? 頭大丈夫かよ?」
おまけに舌打ちまで追加された。
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