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「ちょっと何するのよ!? 返して!」
手を伸ばしたが晴の手はファイルに届かなかった。
なぜなら晴は小柄で身長は152センチ。対する男は晴より30センチ以上はありそうな高身長だった。そんな彼がファイルを持ち上げれば晴には到底手が届かない。
「前々からここはいろんな不動産屋が狙ってた。どうせ、そういう奴らが家主が年寄りだからって強引に丸め込んだんだろ? じゃなきゃ、あの人がここを見ず知らずの奴に譲るなんて絶対にしねえよ」
「違うってば。この契約に仲介は入ってない。私はここの家主と個人的に直接契約したんだから!」
「は?……直接?」
「そうよ」
「…だったらアンタがあの人をそそのかしたってことか?」
「…そそのかしたって…何? そんなことするわけないでしょ? 声をかけてくれたのはここの持ち主の方なんだから」
「そんなわけねえだろ。ここは誰にも渡さないって言ってたんだよ」
いつまでたっても抜け出せない負のループにいるようで、晴はめまいがしそうだった。
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