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「どうかした?」
返事をしようとすると、駐車場からずっと晴の手を握っていた光太郎が晴の手を揺らした。
「こーちゃんち、またおおきいぶどうあるよ」
「そうだな。みんなで食べような」と正木が言うと、
「しじゅきもいっしょにたべる?」
光太郎が無邪気に言った。
突然光太郎の口から出た名前に晴はなぜかドクンと心臓を鳴らした。
「残念だけど、今日は彼は来ないよ」
正木は返事をしながら「ほら、光太郎。はーちゃんに光太郎の家がどこか教えてあげて」と光太郎に促した。光太郎は晴の手を引いて自分の家のドアの前まで行くと「ここだよ!」と叫んだ。
そして、消えなかった疑問を思い出すように「どーしてしじゅきはこないの?」と父親に向かって問いかけた。
「どうしてって」と正木が言いかけると、晴が代わりに返事をした。
「史月くんは違うお友達のところに行ってるみたいだから」
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