1. これから始まる。

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“性格は遺伝しないのだろうか?” そんな疑問を抱きながら、晴は傾きかけた首を真っ直ぐに補正した。 本題に戻らなければと思ったのだ。 「…あなたが……十和子さんお孫さんだということはわかったけど、このとおり、私は十和子さんと契約してるから……私がここに住んでもいいわよね?」 今度は自分の発言に首を傾げた。 彼に問いかけたながら、なぜ彼にそんなことを尋ねているのだろうと自分で疑問に思った。 彼に許しを乞う必要などないはずだ。 彼は即座にそれを否定することはなかったが、「なんでこんなヤツに……」と晴を睨んだ。 「誰にも譲らないって言ってたくせに」 先程も聞いたが、そのことが余程腑に落ちないらしい。 彼は晴から目を逸らし、部屋の隅を見つめた。 もちろん自分への不満は少しも治ってはいないだろうが、彼の怒りの矛先が自分ではなく十和子の方に向き始めているような気がして晴は焦った。 自分から気が逸れるのは有り難いが、十和子は何も悪くない。 「十和子さんがそう言ってたの?」 彼は肯定の返事の代わりに晴への一瞥とため息を返してきた。 「だとしたら……十和子さんはあなたとの約束は破ってないわよ?」 男の眉がぴくりと動いた。
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