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「聞いてねえよ……」
最初の勢いとは打って変わって彼の声がどんどん萎んでいく。
その声のトーンになんだか彼が心配になり、晴は不安気に俯いた。
しかし、そうかと思えば彼が急に声を荒げたので晴は驚いて顔を上げた。
「あんな奴が俺にちゃんと話すわけねえだろ? あの人にとってはどうでもいいことなんだよ」
晴は彼の言う“あんな奴”が最初は自分のことだと思ったが、話の流れでどうやら別の人物らしいとわかった。
「ここがなくなったらどうすればいいんだよ……」
不穏な言葉の連続に晴は不安に煽られて鼓動が乱れた。
そのせいか、左胸の奥には“罪悪感”のようなものまで見え隠れする。
すると、急に彼が振り返り、晴にスマホを差し出してきた。
「……何?」
思わず仰け反ると彼は「ばあちゃんが替われって」と自分は顔を背けながらさらにスマホを晴のほうへ近づけた。
晴は彼のスマホを受け取ると緊張の面持ちでスマホを耳に当てた。
「もしもし……晴です」
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