1. これから始まる。

24/41

1793人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
「聞いてねえよ……」 最初の勢いとは打って変わって彼の声がどんどん(しぼ)んでいく。 その声のトーンになんだか彼が心配になり、晴は不安気に俯いた。 しかし、そうかと思えば彼が急に声を荒げたので晴は驚いて顔を上げた。 「あんな奴が俺にちゃんと話すわけねえだろ? あの人にとってはどうでもいいことなんだよ」 晴は彼の言う“あんな奴”が最初は自分のことだと思ったが、話の流れでどうやら別の人物らしいとわかった。 「ここがなくなったらどうすればいいんだよ……」 不穏な言葉の連続に晴は不安に煽られて鼓動が乱れた。 そのせいか、左胸の奥には“罪悪感”のようなものまで見え隠れする。 すると、急に彼が振り返り、晴にスマホを差し出してきた。 「……何?」 思わず仰け反ると彼は「ばあちゃんが替われって」と自分は顔を背けながらさらにスマホを晴のほうへ近づけた。 晴は彼のスマホを受け取ると緊張の面持ちでスマホを耳に当てた。 「もしもし……晴です」
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1793人が本棚に入れています
本棚に追加