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『晴さん、ごめんなさい!』
彼女はそれを第一声にして、ことのあらましを説明し始めた。
彼は正真正銘彼女の孫だった。
名前は雨宮 史月といい、市内の有名大学に通う大学3年生だった。
晴は初めて彼の名前を知り、改めて彼を見た。
知的で神秘的な彼の名前は、彼が黙って大人しくしていれば確かにしっくりくるものだった。彼の名前を最初に聞いていたら彼に対するイメージも少し違ったかもしれない。そんなことを思いながら晴は十和子の話に耳を傾けた。
彼の自宅は同じ市内にあるものの、十和子さんの住んでいた頃にはよくこの家に来て一緒にご飯を食べたり、泊まることも多かったのだという。
彼に晴や家のことを話そうと思ったが、彼が随分と忙しそうで、ここに来る機会もすっかり減ったことや、十和子自身の引っ越しが急に早まったこと、それに加えて自分が体調を崩してしまったことなども重なり、直接伝えられずに彼の父親に伝言を頼んだのだという。
どうやらその伝言がうまく伝わっていなかったらしい。
つまり、彼が先程言った“あんな奴”は彼の父親のようだ。
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