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『晴さんにご迷惑をお掛けして本当に申し訳ないわ』
十和子は何度も晴に謝った。
しかし、晴にとっての気掛かりは別のところにあった。
「それより十和子さん、体調を崩したって……大丈夫なんですか?」
晴が尋ねると、彼女は軽い風邪だから心配ないと言った。
「それならいいんですけど……。もし何かありましたら遠慮なく言ってください。買い物でも掃除でもなんでも手伝いますから。お大事になさって下さい」
電話の向こうで彼女が息を溜めて微笑むのがわかった。
『お気持ちだけ頂いておくわね。ありがとう』
彼女はお礼を言った後で、再び謝罪を繰り返した。
『本当にごめんなさいね』
「もう謝らないでください」晴は十和子の言葉を遮るように言った。
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