1. これから始まる。

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そんな古くて小さな建物だが、場所柄、地価は相当な額であるだろうし、建物自体も時代を感じさせる趣はそのままに水回りを中心にところどころリノベーションされていて、生活するには最適となっていた。 普通なら晴の予算では到底手の届く物件ではないが、この度縁あって入居となった。 その縁というのはもちろんこの物件の持ち主である貸主とのものなのだが、晴が引っ越す前まではその貸主が生活しており、晴が希望するものであれば家具や電化製品などはそのまま譲ってくれることになっていたので、それに甘えた結果、すでに一通りのものが揃っていた。 家具自体は少ないが、その場に佇んでいるものは値段に関わらずどれもがこの家によく似合っていて、家主のセンスの良さが窺える。 晴は普段、中古品やリサイクル品の類いは購入はしないタイプの人間だが、そんな晴が他人の使用した家具や家電を一式貰い受けることを決めたのは、家主への信頼があってのものだった。 そんな風に運よく家具などを譲ってもらうことができたので、晴は余計な出費を負わずに済んだ。以前住んでいたマンションは、収納は備え付けのものだったので、新たに購入となれば引っ越し費用以外の大きな出費となるところだった。
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