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「なんでそんなこと聞くの……?」
まるでその間を楽しむかのようにすぐに答えない彼に晴は「ねえ、なんで?」とさらに問い詰めた。
「ゴキブリ退治も俺の役目だったから」
「ゴキ……!?」
それは虫がそれほど苦手でもない晴が唯一受け付けない生物だった。
晴はその名前を口にしようとして、その虫の黒光りするあの姿と予測不可能な動きを思い出し、全身に鳥肌を立てて身震いした。
「十和子さんが…こんなに綺麗にしてるんだから……いるわけないでしょ……」
その生物を想像するだけでもいちいち身体が拒絶反応を示す。
「出るわけないでしょ……」
「出るだろ。こんなに古い家なんだし」
「嘘でしょ!?」
「嘘じゃねえよ」
「嘘って言って!」
どうしようもない押し問答をしていると、それに終止符を打ったのは史月の方の一言だった。
「あ、」と史月は台所の隅を見て言った。
「何、何? 何なの!?」
「……いた」
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