1. これから始まる。

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「ごめんなさい……」 晴は自分の腕を掴みながらさらに一歩下がった。初対面の彼に対して大人気(おとなげ)ない行動をとってしまったと思い、恥ずかしくなった。 史月はゆっくりとため息を吐いた。 「……冗談だよ。出たりしねえよ」 「何よ……びっくりさせないでよね」 史月の言葉に晴はいち早く反応した晴は史月がその後に「滅多に、」と付け足したことに全く気付いていなかった。 「よかった……。悪い冗談やめてよね」と晴はまだ少し硬い表情で胸を撫で下ろした。 晴が胸に置いた手のひらを徐々に下ろし、それがお腹の辺りまで来ると、晴は思い出したように少し疲れた顔で史月に声を掛けた。 「ねえ、こんな時間だし、お腹空かない?」 晴は壁掛け時計を見た。 「せっかくだし一緒にお蕎麦食べない? “引っ越し蕎麦”」
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