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晴は早速蕎麦を手に台所に立った。
調理器具のほとんどは十和子が残していってくれたので、引っ越し前の自分の家のキッチンよりも随分と充実している。
しかし、下の引き出しには小さめの鍋はいくつかあるのだが、たっぷりとお湯の入るちょうどいい鍋が見当たらない。
史月に尋ねると、彼は答える前に晴の頭上に手を伸ばし、シンクの上部にある棚から少し大きめの鍋を取り出した。
「ばあちゃん、普段は一人だからデカい鍋使わねえし」
そう言いながら自分の目の前を上から下へ鍋が降りてくるのを晴は眺めていた。
身長も高ければ腕も長い。
「史月くん、背、高いよね。羨ましい」
晴が鍋に水を入れながら言うと、史月はそんな晴の姿を見下ろした。
「……アンタが俺みたいにデカくなる必要ねえだろ」
「史月くんほどにはね。でも、後10センチは欲しかったな。史月くんの身長私に10センチくれないかな?」
晴は水道の水を止めながら史月を見上げた。
「史月くんは……」
晴が自分を見つめ、胸の辺りから頭の先までをその視線で何往復かし始めたので、史月は何事かと思いつつ自分は目を逸らした。
「183センチくらい?」
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