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蕎麦を茹でる間に、史月は慣れた様子でザルやボール、食器などを準備した。
その手際の良さを見て晴は感心した。
「史月くん、料理もよく手伝ってたの?」
「……別に、よくでもねえけど」
「へえ、でも偉いね」
晴は最初に出会った頃とは見違えるような笑顔を見せている。
先ほどのゴキブリの件などまるでなかったことのようだ。
史月は不思議な生き物でも見るような目つきで晴を見つめた。
「もうそろそろいいんじゃねえの? 俺、伸びた麺て嫌い」
史月が鍋の中をチェックしながら言うと晴もそれに同意した。
晴は茹で上がった蕎麦をザルにあげ、冷水を浴びせた。そして程よい加減で水を切ろうとすると、史月に止められた。
「は? もっとちゃんと洗えよ」
史月は晴からザルを取り上げて水道水の蛇口を目一杯開き、蕎麦に勢いよく流水を浴びせて麺を洗い始めた。
「信州の美味い蕎麦が台無しじゃねえか」
史月は蕎麦を洗い終わると、氷水でしっかり冷やした後、盛り付けまで完成させた。
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