1. これから始まる。

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蕎麦を茹でる間に、史月は慣れた様子でザルやボール、食器などを準備した。 その手際の良さを見て晴は感心した。 「史月くん、料理もよく手伝ってたの?」 「……別に、でもねえけど」 「へえ、でも偉いね」 晴は最初に出会った頃とは見違えるような笑顔を見せている。 先ほどのゴキブリの件などまるでなかったことのようだ。 史月は不思議な生き物でも見るような目つきで晴を見つめた。 「もうそろそろいいんじゃねえの? 俺、伸びた麺て嫌い」 史月が鍋の中をチェックしながら言うと晴もそれに同意した。 晴は茹で上がった蕎麦をザルにあげ、冷水を浴びせた。そして程よい加減で水を切ろうとすると、史月に止められた。 「は? もっとちゃんと洗えよ」 史月は晴からザルを取り上げて水道水の蛇口を目一杯開き、蕎麦に勢いよく流水を浴びせて麺を洗い始めた。 「信州の美味い蕎麦が台無しじゃねえか」 史月は蕎麦を洗い終わると、氷水でしっかり冷やした後、盛り付けまで完成させた。
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