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「すごい、お蕎麦屋さんみたい!」
晴が思いのほかはしゃいだ様子だったので、史月は呆れたのか照れ臭かったのか微妙な顔をしながら顔を背けた。
「……料理習ってたんじゃねえのかよ?」
「あ……うん、まあね……」
史月は十和子がたびたび料理教室に通っていたことは十和子から聞いて知っていた。
料理が得意なくせになんで行くのかと尋ねると、そこで仲良くなった女の子がいて、その子に会うのが楽しみだからと言っていたのを思い出し、それが晴だと言うことにも気がついた。
十和子の歳でいきなり若い女と仲良くなったなどと聞いて、史月は相手がどんな人物なのか気にはなっていたが、「料理よりも食べることが好きな子」と聞いていたので、しっくりきた。
「習っててこれかよ?」
史月に呆れ顔を突きつけられたが晴は唇を尖らせて対抗した。
「しょうがないじゃない。作るよりも食べるほうが好きなんだから」
晴の言葉に本当は吹き出しそうだった史月だが、なんとか堪えて晴に背中を向けると蕎麦を居間のちゃぶ台へ運んだ。
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