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晴は自分の幸運を噛み締めるようにゆっくりと床を軋ませながら廊下を進んだ。
そして、どこか吸い寄せられるように左手にある居間の畳に寝そべった。
見上げた天井は木材の木目がそのまま活かされたものであり、その中心にはレトロなペンダントライトが下がっていた。
縁側へ顔を向けると、その向こうには小さいながらも塀で区切られた日当たりのいい庭があり、昔ながらの洗濯の物干し竿が見えていた。
前の家主が洗濯は乾燥機ではなく日干にするのが日課だと言っていたのを思い出す。庭に差し込む日差しを見つめながらそれもたまには悪くないと晴も思った。
畳の上に寝転んでぼんやりと縁側の外の庭を眺めている。ただそれだけで癒されて、何時間でもこのまま過ごせそうな気がしたが、そんなことをしていては今日は何も片付かない。
そして、そのことを警告するかのように畳の上のスマホに通知が届いた。
今回の晴の引っ越しを心配してくれていた知人からのメッセージだった。
『引っ越しは無事に終わった?』
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