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二人はちゃぶ台を挟んで向かい合って座った。
「いだだきます」と晴が手を合わせると、向かいの史月が無言のままテーブルに隠れてしまうような低い位置で手を合わせたのが見え、晴は彼の意外な一面に驚きつつも、その仕草に彼が十和子の孫だということがやっと実感できたのだった。
「……ウマ」
「でしょ? 長野の蕎麦もいくつか取り寄せてみたんだけどここが一番なのよね」
勢いよく蕎麦をすする史月に気を良くした晴は自分も上機嫌で蕎麦をすすった。
「俺のしめ加減で出せた味だろ。あのままだったらここまで美味くなってないわ」
「本当にそうかも。今まで美味しいとは思ってたけど、今までで一番美味しい気がする」
意外にも晴があっさりと肯定してきたので、史月は次の言葉に困った。
「……なんで引っ越ししたら“蕎麦”なんだよ? 意味わかんなくね?」
結果、出てきたのがこの言葉だった。
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