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「……続いてるって……全然深い意味はないから。前からの相談もあったし、今回の引っ越しも気に掛けてくれてて連絡とってただけだし」
晴は反論したが絵理奈の方へは視線を一瞬向けただけで、すぐに視線をスマホの画面に戻した。
「晴はそうでも、あっちはどうかなぁ? “気に掛けてる”って単に心配してるだけじゃないと思うけどぉ」
絵理奈は語尾を伸ばしながらやけにねっとりと絡みつくような言い方をした。
「正木課長にお礼するなら、一緒にご飯でも食べなさいよ。その後はもっと“大胆なお礼”をしてもいいんじゃない?」
絵理奈は再び晴の胸元にわざとらしく視線を向けた。
「何言ってるのよ」と晴は絵里奈を睨み、スマホを持ち上げて腕で絵理奈の視線を遮った。
“正木課長”……
晴と絵理奈が揃ってそう呼ぶその人物は、二人が務めるハウスメーカー、MISUMOホームのかつての晴の上司だった男だった。
晴は営業部所属で、直属の上司が正木 瑛臣、彼であった。
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