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「お疲れさま」
「お疲れ様です」
開いた車の窓からお互いに顔を覗かせて挨拶を交わした。
かつては毎日顔を合わせていて、正木が退職後も度々会うこともあったのだが、実のところこうやって改めて夜に会うのは、随分と久しぶりのことだった。
窓から覗いた正木の表情はいつも通りの優しさをたたえながらも、夜の空気を纏っているせいかいつもより大人っぽく見えた。
晴は「失礼します」と少しかしこまってドアを開けた。
車内の空気はエアコンで冷えていて心地よかった。
「寒いかな?」
駅まで歩いたのと、元上司に会う緊張感で少し汗ばんだ身体にはもう少し温度を低くしたいところだったが、晴は「ちょうどいいです」と返事をした。
その直後に晴は後部座席へ視線をやった。
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