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「そろそろ帰ろうか。送るよ」
光太郎は祖母の家に泊まることになったが、正木はその後も晴を送るためだと言ってアルコールは飲まなかった。
10時を回って正木が言うと、彼は予想通り会計をスマートに済ませてしまった。
大人二人ならもう少しゆっくりしてもいい時間だが、夜に光太郎なしの二人きりというイレギュラーな状況に緊張していた晴は、その緊張を紛らわすためにいつもより少し早いペースで飲んでしまった。
おまけに、正木の方も息子の迎えを気にしなくて良くなったせいか、それまでより饒舌になり、晴が話す近況やかつての同僚や部下たちの話も楽しそうに聞いてくれ、晴は弾む話にさらにアルコールが進んでしまった。
その結果、普段はある程度飲んでも顔色を変えない晴だが、今夜は正木にわかるほど顕著に顔に出ていた。
晴は自分の火照った顔を手の平で煽いだ。
「ご馳走様でした」
晴はバツが悪くなりながらもお礼は忘れなかった。
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