2. 大家代理

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その間も片足が宙ぶらりんになった晴の身体を、正木が支えていた。 ブラウスの薄い生地を通して正木の熱を感じると、晴が身体を支えるために正木の胸に置いた自分の手の平も熱いことに気がついた。 晴の心臓はドクンと大きく打ち、その後はリズムを乱して鼓動を早めた。 正木だってシャツ一枚。薄い布越しにでも感じた久しぶりの人の肌感は、晴に正木が男であることを思い知らせるには十分だったし、二人の物理的な距離を急に実感させるものになった。 「すみませんっ」 晴が正木の胸板を押し返そうとすると、正木はそれを避けるように晴の足元を覗き込むようにして上半身をずらした。 「足、大丈夫だった? 靴が引っかかったのかな」 晴は正木の腕に支えられたまま、正木とは離れるどころか逆に距離が縮まり、正木の胸を押し返すための腕を伸ばすスペースを失った。
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