2. 大家代理

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仕方なく自分も正木から顔を背けるように自分の足元を見た。 「(かかと)が何かにハマっちゃって……」 二人で見ると、晴のヒールの先がアスファルトに出来たひび割れにはまっていた。 晴を支えたまま正木はそれを外して、晴に靴を履き直させた。 「よかった。靴は傷ついてないみたいだよ。しっかし、こんなの履いてよく歩けるよね。女性を尊敬するよ」 「私はいつも履いてるわけじゃないんですけどね」 晴はそう言いながら再び正木から離れようとしたが、緩んだはずの正木の手にわずかに力が入った。 そして、正木は「そういえば」と呟いた。 「香山さんの顔が……いつもより近く感じる」 視線を上げればすぐに正木の顔がある。 確かに、今までで一番近い距離感だった。 一度目を逸らしたものの、正木が黙っているので再びゆっくりと視線を戻すと、晴の視線の高さに正木の唇があった。 その唇がかすかに微笑んだ。
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