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正木は晴をひっぱり駐車場への道を急いでいた。
「……大学生ですかね。元気……でしたね」
晴が正木の横顔を見つめて呟くと、「元気っていうか」と正木も呟きながら足を止めた。そして、晴を見るとため息を吐いた。
「ああいうのに絡まれたら相手にしちゃダメだよ。ああいう奴らは反応したら図に載ってあれ以上に絡んでくるんだから」
正木は晴の目を見て言った後、再びため息をついた。
「……香山さん、面倒見がいいところがあるからなぁ。真面目だし」
正木は晴の長所を述べているはずなのに浮かない顔を見せた。
「……だから心配だよ。変なのに引っかからないかって」
正木は再び思い詰めたように晴を見つめたが、晴の方は明るく「大丈夫ですよ」と返答した。
それを見て再びため息がこぼれそうになるのを正木はなんとかこらえた。
「行こうか」
「はい」
やっと静かになった夜道でコツンとヒールの音が小さく響いた。
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