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再び正木の車に乗り込むと、晴はクセののようにまた後部座席を見た。
そのことに正木も気付き、2人で顔を見合わせて笑った。
「光太郎くんがいないの、なんか慣れなくて」
「俺もだよ。実は、今日は香山さんに会うってことは光太郎には内緒なんだ」
「なんでですか?」
晴は尋ねながらシートベルトを閉めた。
「そりゃ、言ったら絶対自分も行くって言うしね。せっかくばあちゃんが誘ってくれて、光太郎もその気になってるから水をさすのもね」
正木は言いながら車を発進させた。
「そうですね。言わなくて正解でしたね。楽しく過ごして、今頃もう疲れて寝ちゃってるかもですね」
晴は光太郎の寝顔を想像しながら笑った。
すると、信号待ちで正木が晴を黙って見つめた。
「でも、一番の理由は……俺が香山さんと二人になりたかったからかな」
再び車が走り出し、晴は遅れて「え?」と声をもらした。
「光太郎がいると、ここぞとばかりに香山さんに甘えるだろ? ああ見えて、俺をライバル視してるから俺の前で君を独り占めしようとしてるんだよ」
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