1835人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
「そんな風には見えませんけど」と晴は普段の光太郎の姿を思い浮かべて言った。
「香山さんは気づかないかもしれないけど、俺は男同士だからわかるんだよ。女性同士でもあるだろ? 女の勘とかいうやつ。男同士にもあるんだよ」
正木は眉を上げて断言した。
「……そうなんですね」
晴も感心したように眉を上げて答えたが、光太郎が自分に甘えるのは単に幼さからくる自然な行為のように思えた。
しかし、正木の方は真剣にそう思っているらしい。
「だから今日は俺が香山さんを独り占めしようと思ってね」
前を向いたまま微笑む正木の横顔を対向車のライトが照らした。
……独り占め……
晴はその言葉をどういう意味で解釈すればいいのか咄嗟にはわからなかった。
すると、正木の方は慌てて「独り占めって……別に変な意味じゃなくて」と弁解したが、すぐにそれも言い直した。
「いや…やっぱり…変な意味かな」
正木の言葉にさらに虚を突かれた晴は黙る口とは裏腹に騒がしくなる胸元を手の平で押さえつけた。
そもそも晴は飲み過ぎていたせいもあって鼓動が早い。自分が何に酔っているのかわからなくなり、晴は座席のシートに身を沈めて落ち着こうと必死になった。
最初のコメントを投稿しよう!