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車のドアを閉める音が住宅街にやけに大きく響いた。
その音に倣って晴の鼓動の音もバタン、バタンと大きくなった。
“食事の後に大胆なお礼”……
なんで今思い出すのよ、と晴は脳裏に浮かんだ絵理奈の言葉に心の中で呟いた。
「……そういう意味じゃないから」
晴の口からは心の声がもれた。
しかし、だとすれば、これはどういう意味なのだろう?
晴は自分に問いかけながら正木を玄関に案内した。
「まだちゃんと片付いてないところもあるんですけど」と晴はバッグから家の鍵を取り出した。以前のマンションとは違い、昔ながらの先のギザギザした鍵だった。
玄関の鍵を開けようとして、晴はある違和感に手を止めた。
「あれ……?」
「どうかした?」
正木が後ろから声を掛けてきたが晴はなんでもないと返事をした。
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