2. 大家代理

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実際は、玄関の鍵が開いていたのでなんでもないことではなかった。 しかし、今朝、出掛ける時に鍵をかけ忘れたのかもしれないと思うと、そんな自分を正木には知られたくなくてつい、そんな返事をしてしまった。 「どうぞ」と正木を促しながら晴は扉の取手に手を掛けた。ガラガラとレールが転がる音がして玄関扉が開いた。 中に入ると右手に靴箱がある。これも十和子が残していってくれた年代物の代物だった。晴は靴箱の上にある玄関の照明のスイッチを手探りで探した。これにもだいぶ慣れてきた。 スイッチを見つけ、指先でそれに触れた途端、明るくなった室内にあるはずのないものが浮かび上がり、晴は悲鳴をあげて正木に飛びついた。 正木の方も慌てて晴を抱き寄せた。 玄関から上がってすぐの廊下にが倒れていたのだった。 「ヤダ……何これ!? どういうこと!?」 半分パニックになりながら、ほとんど腰が抜けているのに晴が立っていられたのは、正木に支えられていたからだった。 「とりあえず、外に出て警察に通報しよう」 正木が玄関の外に晴を連れ出そうとすると、横たわっていた人物が反応し、二人はさらに身体を密着させて固まった。
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