2. 大家代理

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「ここに来たらアンタいなくて帰るつもりだったけど、ちょうど宅配業者が来て、そいつが荷物持ったままこの辺うろうろしてるし、聞いたら、アンタ宛の荷物じゃん。住所は多分前の住所だったけど。ここの表札、まだ雨宮のままだし、わかんなかったみたいで、俺が荷物引き取った。食い物だし転送かかってるから早く届けたかったみたいだし。それを外に放置して帰るわけにもいかねえだろ?」 史月は正木の方は見ようともせず、あくまでも説明した。 「宅配便?」 「シャインマスカットらしいけど、冷蔵庫に入ってる」 「あ……あれ、届いたんだ! ふるさと納税の返礼品だ。 楽しみにしてたの」 晴の顔が急に明るくなった。 「そっか、ごめん。なら逆にお礼言わなきゃね。せっかくのシャインマスカットの食べ頃を逃すところだったわ。ありがとう」 晴は納得してお礼まで口にしたのだが、その横で納得のいってない者が約一名。怪訝な顔を見せながら二人のやりとりを見ていた正木は晴には気づかれないよう鼻からため息を吐き出し、「ちょっといいかな」と堪えきれなくなったのか口を挟んだ。
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