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「二人は……知り合いってことで間違いなさそうだけど、いくら宅配便のことがあったとしても、勝手に入るとか入らないとか……香山さん、本当に大丈夫なの?」
「……大丈夫です」
晴は横目に史月を見ながら半分傾きかけた首の方向を修正して頷いた。
色々と問題はあるが、ここはひとまず落ち着かせたかった。
「大騒ぎしちゃってすみません」
晴は正木に謝りながら彼の手元を見た。
彼はまだ不審に思っているのか、一度通報をしようとしたスマホを手にしたままだった。
「香山さんが謝ることじゃないよ」
むしろ晴からの謝罪は正木は気に入らなかった。本来謝るべきなのは誰なのか、と暗に示しながら正木は史月を見た。
そして、晴に視線を戻すと、「本当に大丈夫なんだね?」と晴に念をおして確認し、晴の返事を待ってスマホを仕舞った。
晴はそこで深い息を吐き出した。
「もう……何で毎回こういう登場の仕方なの? 史月くんに会うたびに心臓が止まりそうになるじゃない」
晴は胸元を押さえながら史月に言った。
「また通報するところだったわよ」
晴の呟きに正木の眉がぴくりと動いた。
「じゃあ……もしかして、彼が……?」
正木はここで行き着いた答えに目を見開いた。
「はい、彼が大家代理の雨宮史月くんです」
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