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「史月くん、いつからここにいたの? 喉乾いてるでしょ? 何か飲まなきゃ熱中症になっちゃう」
晴は立ち上がって奥の台所へ向かいかけ、正木を振り返った。
「正木さん、あの……こんな状況ですけど、良かったら上がってください」
晴に返事をする前、正木は史月と目が合った。
「ありがとう。せっかくだからお邪魔するよ」
正木は史月とぶつかった視線を逸らし、晴に微笑んだ。
晴はホッとしたような顔を見せると、台所へ入って行った。
正木が靴を脱いで上がろうとすると、背中からぼそりと声がするのが耳に入った。
「あがるのかよ」
正木が振り返るといつの間にか史月が身体を起こし、座ったまま自分の方を見ていた。
正木は小さく息を漏らした。
「彼女がああ言ってくれてるし、もともとそのつもりでここに来たんだ。彼女が美味しいハーブティーをご馳走してくれるってね。君の存在が予定外だっただけだよ」
正木が史月の横を通り過ぎようとすると、史月が笑った。
「オッサン、“彼氏”じゃないんだろ?」
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