1762人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
目の前に見知らぬ男が立っていて、台所から晴を見下ろしていた。
見たところ、まだ二十歳前後の若い男だ。
最近テレビで住宅街に押し入る強盗事件がニュースになっていた。若い男のグループでいわゆる闇バイトというやつだ。
「私……お金なんて持ってないわよ……!? ないけど……そっちの…バッグに…少しならあるから、お願いそれで出ていって……」
必死に伝えたつもりだが、唇がガタガタと震え、喉がカラカラに乾いていたため、相手に伝わったのかわからなかった。ただ、相手が怪訝そうに、それでいて苛立っているように見えたので晴は生きた心地がしなかった。
余計なことをしたら何をされるかわからない。最悪の場合まで想定できた。
晴はスマホを握った手を背中に回し、操作を中断した。
「は? 金とかいらねえし」
吐き捨てるような男のセリフは晴をさらに恐怖のどん底に落とした。
お金でないなら次に狙われるのは自分自身だと思ったからだ。
最初のコメントを投稿しよう!