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正木がグラスを持ち上げると、ガタガタと音を立てながらその男が這うようにして和室に入ってきた。
そして、晴の手元からグラスを奪うと、中身を勢いよく喉に流し込んだ。呆気に取られている二人の前で、史月は自分の分だったもう一つのグラスにも口をつけ、立て続けに飲み干した。
そして、そのまま倒れ込むようにして正座をする晴の腰に腕を回すと、そのまま彼女にしがみついた。
「え、ちょ……ちょっと何!?」
突然のことに晴は逃げる間もなかった。
「ハル……」
「……は、はる!?」
飛び退けようにも身体に巻き付く彼の腕が重い。
「なんか頭がガンガンして気持ちワリイ……」
擦り寄る彼の身体が異様に熱い。
「え、史月くん、大丈夫!?」
晴は自分の膝の上の史月の髪を掻き上げ、彼の頬に触れた。
ついさっきまで冷たいグラスに触れていた晴の手のひらが、史月の熱でぬるまっていく。
「もしかして……熱中症?」
「どうしよう」と晴が呟きかけた時には、すぐそばに正木がやってきていた。
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