1862人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
「彼も……子供みたいなものだろ? まあ……身体の大きさはだいぶ違うけど」と正木は二人の間に横たわる大きな図体を見下ろした。
「……ですね」と晴も史月を見つめた。
「出会った時からやることなすこと予想ができなくて驚かされっぱなし。子供よりも“こども”……」
晴は指先で寝ている史月の前髪を掻き分けた。
その仕草に正木は一瞬心が乱れた。
「香山さん」
正木は慌てて晴に声を掛けたが、その先の言葉を用意しているわけではなかった。
「あ、えっと……さっきの話だけど、」と正木らしくなく言葉に詰まった。
「さっきの話……前向きに考えてみてほしい」
正木は自分を落ち着けるためにもゆったりとした口調で言った。
「わかりました」
晴も落ち着いて返事をした。
沈黙の中で二人は見つめ合った。
二人の間に史月が寝転んでいることも、その時ばかりは正木の頭の中から消えそうになった。
あと数秒間そのまま見つめ合っていたら、正木は史月のことなど完全に忘れて何か行動を起こしていたかもしれない。
「あの、ハーブティー……冷えたのを淹れ直しましょうか?」
「じゃあ、お代わりを貰おうかな。俺も喉が渇いた」
晴の言葉に我に返った正木は立ち上がって史月から離れると、氷の溶け切ったハーブティーをカラカラに渇いた喉に流し込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!