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正木が寝転ぶとい草のまだ青い臭いが鼻腔の奥に届き、畳独特のわずかなクッション性が背中に心地よかった。
ちゃぶ台の下から対角側を見ると、史月がまだ寝そべっている。
一度寝そべったら離れられない……
正木にはまさに彼が今その状況に陥っているのではないかと思った。
今夜が彼女と二人きりだったら今頃どんな風に過ごしていただろうか。
自分をこの家に招いてくれた時の晴の表情は正木に期待と予感を与えるものだった。
今日は息子の光太郎はいない。時間を気にする必要もなかった。
今夜は……“男”でいられるはずだった。
寝そべったまま晴を見上げると、彼女と目があったが、彼女の視線は同時に寝顔りを打った史月の方に気を取られてそちらへ向いてしまった。
正木は思わず畳の上の彼女の手を取った。
すると、驚いた晴の視線は再び正木に戻った。
「正木さん……?」
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