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スマホの着信を知らせる小刻みな振動音だった。
畳の上で正木の横に伏せられていたスマホが鳴っている。
二人同時にそれに気付いたが、正木はすぐにスマホに手を伸ばそうとはしなかった。
「正木さん? 電話……」
スマホと正木の顔を行ったり来たりする晴の顔からはつい今し方まで見えていた緊張と恥じらいを含んだやや強張った笑顔は消えていた。
こんな時間にかかってくる電話に心当たりは一つしかない。
しかもそれを晴もわかっている。
鳴り続けるスマホの小さな振動音は正木に“シンデレラタイム”の終わりを告げていた。
正木は晴の手から自分の手を離し、その手でスマホを掴んで身体を起こした。
「もしもし」
晴は崩していた姿勢を正して、正木の電話が終わるのを待った。
「ああ、わかった。すぐに行くよ」
正木の電話はその言葉で締めくくられて終わった。
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