3. 男の勘

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正木のいなくなった玄関で晴は自分の手の甲を握りしめた。 いつもの自分らしく明るく正木を送り出したものの、胸の中ではまだ鼓動が音を乱していた。 先ほどのの衝撃は消えていなかった。 手の甲を撫でる少し湿った彼の肌質。 指に絡む少し骨ばった長い指。 今もまだその感覚が自分の手に残っている。 彼から向けられた熱い視線も素面(しらふ)なのにやけに色っぽい顔つきも目に焼き付いたままだった。 もしも史月がいなくて、二人きりだったら……。 目を閉じてその先の展開を想像すると唇がかすかに開いた。 それだけでない異変を身体に感じると、晴はそれを紛らわせるためにわざと大きな深呼吸をして居間に戻った。
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