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「そんな煽ることされちゃ、嫌だって言っても止めてあげないけど?」
「……っ、いいですよ、止めなくって」
自分がこんなに大胆なことを言えるようになってることにも驚くけれど。
もうずっと、私は矢吹さんと、もっと触れたくて、たまらないんだ。
「それとも、我慢してたの、私だけ、ですか?」
「ほんっと、いつからそんなに悪い子になったのかな」
私はいつだって、矢吹さんを追いかけているから。
「……でも、」
矢吹さんはそう言って、身体を私から離した。
え、やっぱり、今の積極的すぎた?
引かれたかな?
卒業すれば、矢吹さんともっと触れ合えるようになれると思ってた。
もっと体温を……。
そう思っていたのは私だけ?
不安になりながら、私も同じようにソファに座りなおす。
「こっちにもちゃんと順序っていうのがあるから」
矢吹さんはそういうと、ソファの横に置いていた紙袋から黒い箱を取り出した。
矢吹さんが取り出すまで、そこに紙袋があったこと全然気が付かなかった。
なんだか前にも同じことがあった気がする。
そう思って、首もとのネックレスを触る。
矢吹さんからこのネックレスをもらった時も、確かこんな風に、箱を取り出されて。
「これって……」
パカッと開けられた箱の中には、キラキラと光るシルバーリング。
「俺の気持ちはずっと変わってないよ。梓葉が高校卒業したらしようって決めてた」
「嘘……」
あまりの衝撃に、手が震える。
これから矢吹さんに、一歩近づける。
それだけですごく嬉しいのに。
「出会って付き合うようになって一緒に過ごして、やっぱり、俺の人生に梓葉がいないのなんて考えられないし、梓葉が俺を選んでくれるなら……」
そんなもの……答えなんて決まっている。
でも……。
「矢吹さんこそ、本当にいいの?本当に本当に、私で……」
「初めてだよ。こんなに1人の女の子に夢中になったのは。これからだってそう」
目頭が熱くなって、瞬きをしたら完全に落ちてしまう。
「うっ、こんなタイミングとは……」
「早いのはわかってる。これから梓葉も大学生になって、まだまだ学生の身分は変わらない。けど、だからこそ、このタイミングだと思うから。真面目で芯が強くて、ちゃんと向き合って俺のこと全部包んでくれる梓葉と、これからもずっと一緒にいたい。俺と、結婚してくれる?」
「……っ、」
どんな言葉を並べても、この喜びはうまく表現できそうになくて。
ただただ、涙が落ちていくばかりで。
矢吹さんに出会ってたから、私は随分と涙もろくなってしまったな。
私だって、まったくおんなじ気持ちだ。
これからも、ずっとずっと矢吹さんと一緒にいたい。
「っ、よろしくお願いしますっ!!」
私がそう言うと、矢吹さんが優しく微笑んでから、私の薬指に、キラキラと光るリングを通した。
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