III

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「こんなのペテンだ! どうせ、そこの物陰でも隠れているんだろう!」 そう言うのはさっきのトドのような男だった。手に持ったステッキを振り上げて、顔を真っ赤にしている。 「いいや、旦那! まだ、終わっていませんよ」 さぁ皆さん、公園の入り口をご覧ください! ドラムロールの音と共に、観客の目が集まった。そこには、あの少年が両手を振りながら飛び跳ねていた。 客席は歓声に包まれ、大いに盛り上がった。立ち上がって拍手をする者まで現れた。男は口をあんぐりと開けたが、くだらん! と言い、公園の入り口へドタドタと歩き始めた。入り口に移動した少年は、男が近づいてくるのをみると、真っ先に市内へ逃げ出した。男は怒鳴り声を上げながら、歩いているのか、はたまた走っているのか分からないペースで少年を追いかけて行ってしまった。
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