[掌編][ピー]を[ピー]してきたぜ! - 2022.02.14 / 1,484字

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[掌編][ピー]を[ピー]してきたぜ! - 2022.02.14 / 1,484字

★「上級医療情報技師能力検定試験を受検して来たぜ!」との差し替えで小説家になろうにUPした落書き。 (更新) 2022.02.14 新規 2022.02.19 特定箇所を伏せ字に変更 2022.07.30 なろうにUPした別版を文末に追加 1,512字 ------------  ある夏の暑い日。  俺は目的地付近で電車を降り、駅前で地図を眺めていた。  ここだ。この近くにある筈なんだ……  雲一つない空は日差しがとても厳しく、まだ朝の8時過ぎだというのにただそこに立っているだけで体力を消耗する。  とにかくさっさと辿り着きたい。その一心で俺は目的地を探して歩き始めた。  ――おかしい。  じりじりと照りつける太陽。吹き出す汗。  いくら歩いても一向に地図の場所に到着する様子がない。  たまりかねた俺は、通りすがりの老人をつかまえて道を尋ねた。 「キシシ……ああ、あそこだね……ああ、ああ、知っているとも。  お兄さん、あんたは本当に運がいいよ……ほ・ん・と・う・に、ねぇ。キシシ……」  地図を見た老人は思わせぶりにゆっくりと顔を上げ、薄気味の悪い笑みを浮かべながら言った。  そのあまりの不気味さに、俺は声をかけたことを心底後悔した。 「あ、ありがとうございます……!」  だがその老人は確かにその場所を知っていると断言したのだ。  とにかく行かなければ――!? 「ギャアーッ!!! ギャアーッ!!!」  甲高い叫び声を上げながらゴミ捨て場に汚らしく群がってくる真っ黒いカラス。  老人の持つ空気感にすっかり当てられていた俺は、唐突に現れたその存在の威圧感にさらなる恐怖を覚えて反射的にビクっと身を縮ませた。  暑さと恐怖と冷や汗で、もはや全身がグショグショになっていた。  俺はニヤニヤする老人を尻目にその場を足早に立ち去り、再び歩き始めた。  その“会場”はじきに見つかった。  老人から教えてもらった道は結果として正しかった。  会場はビルの立ち並ぶ街道から少し外れた、うらぶれた路地にあった。  ああ、ついに見つけた……!  しかし感傷にふけっている暇はない。  俺は腕章を付けた案内人に一礼して、軽い足取りで古びた雑居ビルの玄関ホールに入った。  ひんやりとした建物内の空気にようやく到着したという実感がこみ上げてくる。  そこで手を消毒し検温を行って問題が無いことを確認する。  俺はひと呼吸ついた後に受検票を確認し、会場として割り当てられた試験室を探し始めた。  会場は入り組んでおり、まるで迷路だった。  行っては戻りを繰り返し、何度目の角を曲がった頃だろうか。  俺はやっとのことで夢にまで見たその場所に辿り着いた。  部屋はこじんまりとした小会議室で、そこにいたのは二人の試験官を含めてもたったの十人ほどだった。  そして俺を除く全員が既に着席していた。  受験者たちは互いに興味もないのか皆無表情で、まるでこれから説教でも受けるかの様に俯き加減で与えられた座席に腰を下ろしていた。  俺も着席する。  空気が重々しい。何て重圧だ……  そうしているうちに10分ほどが経った。試験開始まであと20分……10分……全員が口を開くどころか身じろぎひとつせずそこでジッとしていた。  集中、集中だ……!  かき乱れる心を何とか落ち着かせようと必死で精神を統一する。  恐怖、不安、緊張、焦り……何が何だか分からない感情がない交ぜになり全身からもうもうと湯気が立ち昇る。  しかしそのとき俺は気付いた。気付いてしまった。  ああ、あああ…… 「アッアッアッアァーーーーッ!!!」  俺は思わず立ち上がって絶叫した。  会場の全員がビクッとなる。  俺……俺はァ……恐怖と緊張のあまり[ピー]……[ピー]していたのだァッ!  しかも大分前からだッ!!!  渋面を作りながら恐る恐る、それでいてゆっくりと試験官が近付いてくる。 「キミ……今すぐに会場から退出しなさい。さ……さあ、早くッ!」  道理で皆こっちを見ない訳だぜ……!    ああ、[ピー]……  何て……何て恐ろしいんだ……  俺には……俺にはまだ……早すぎたんだッ! おわり。 ---------------- ■別バージョン 2022.07.30 1,512字 ----------------  ある夏の暑い日。  俺は目的地付近で電車を降り、駅前で地図を眺めていた。  ここだ。この近くにある筈なんだ……  雲一つない空は日差しがとても厳しく、その暑さは朝の8時過ぎだというのにただ立っているだけで体力がガリガリと削られる程だった。  とにかくさっさと辿り着きたい。その一心で俺は目的地を探して歩き始めた。  ――おかしい。  じりじりと照りつける太陽。吹き出す汗。  いくら歩いても一向に地図の場所に到着する様子がない。  たまりかねた俺は、通りすがりの老人をつかまえて道を尋ねた。 「キシシ……ああ、あそこだね……ああ、ああ、知っているとも。  お兄さん、あんたは本当に運がいいよ……ほ・ん・と・う・に、ねぇ。キシシ……」  地図を見た老人は思わせぶりにゆっくりと顔を上げ、薄気味の悪い笑みを浮かべながら言った。  そのあまりの不気味さに、俺は声をかけたことを心底後悔した。 「あ、ありがとうございます……!」  だがその老人は確かにその場所を知っていると断言したのだ。  とにかく行かなければ――ッ!? 「ギャアーッ!!! ギャアーッ!!!」  甲高い叫び声を上げながらゴミ捨て場に汚らしく群がってくる真っ黒いカラス。  老人の持つ空気感にすっかり当てられていた俺は、唐突に現れたその存在の威圧感にさらなる恐怖を覚えて反射的にビクっと身を縮ませた。  暑さと恐怖と冷や汗で、もはや全身がグショグショになっていた。  俺はにやけた顔でこちらをジロジロと眺める老人を尻目に、その場を足早に立ち去って再び歩き始めた。  その“会場”はじきに見つかった。  老人から教えてもらった道は結果として正しかった。  会場はビルの立ち並ぶ街道から少し外れた、うらぶれた路地にあった。  ああ、ついに見つけた……!  しかし感傷にふけっている暇はない。  俺は腕章を付けた案内人に一礼して、軽い足取りで古びた雑居ビルの玄関ホールに入った。  ひんやりとした建物内の空気にようやく到着したという実感がこみ上げてくる。  そこで手を消毒し検温を行って問題が無いことを確認する。  俺はひと呼吸ついた後に受検票を確認し、会場として割り当てられた試験室を探し始めた。  会場は入り組んでおり、まるで迷路だった。  行っては戻りを繰り返し、何度目の角を曲がった頃だろうか。  俺はやっとのことで夢にまで見たその場所に辿り着いた。  部屋はこじんまりとした小会議室で、そこにいたのは二人の試験官を含めてもたったの十人ほどだった。  そして俺を除く全員が既に着席していた。  受験者たちは互いに興味もないのか皆無表情で、まるでこれから説教でも受けるかの様に俯き加減で与えられた座席に腰を下ろしていた。  俺も着席する。  空気が重々しい。何て重圧だ……  そうしているうちに10分ほどが経った。試験開始まであと20分……10分……全員が口を開くどころか身じろぎひとつせずそこでジッとしていた。  集中、集中だ……!  かき乱れる心を何とか落ち着かせようと必死で精神を統一する。  恐怖、不安、緊張、焦り……何が何だか分からない感情がない交ぜになり全身からもうもうと湯気が立ち昇る。  しかしそのとき俺は気付いた。気付いてしまった。  ああ、あああ…… 「アッアッアッアァーーーーッ!!!」  俺は思わず立ち上がって絶叫した。  会場の全員がビクッとなる。  俺……俺はァ……恐怖と緊張のあまり[ピー]……[ピー]していたのだァッ!  しかも大分前からだッ!!!  渋面を作りながら恐る恐る、それでいてゆっくりと試験官が近付いてくる。 「キ、キミ……今すぐに会場から退出しなさい。さあ、早く……急ぐんだッ!」  ……クッ……道理で皆……!    ああ、上級……  何て……何て恐ろしいんだ……  俺には……  キモデブには……  まだ……早すぎたんだァーッ! おわり。 --------------- ■note、カクヨムに投稿した別バージョン --------------- [掌編]上級医療情報技師能力検定試験を受検してきたぜ! - 2023.02.05 / 1,505字  ある夏の暑い日。  俺は目的地付近で電車を降り、駅前で地図を眺めていた。 ここだ。この近くにある筈なんだ……  雲一つない空は日差しがとても厳しく、その暑さは朝の8時過ぎだというのにただ立っているだけで体力がガリガリと削られる程だった。 とにかくさっさと辿り着きたい。その一心で俺は目的地を探して歩き始めた。  ――おかしい。  じりじりと照りつける太陽。吹き出す汗。 いくら歩いても一向に地図の場所に到着する様子がない。  たまりかねた俺は、通りすがりの老人をつかまえて道を尋ねた。 「キシシ……ああ、あそこだね……ああ、ああ、知っているとも。 お兄さん、あんたは本当に運がいいよ……ほ・ん・と・う・に、ねぇ。キシシ……」  地図を見た老人は思わせぶりにゆっくりと顔を上げ、薄気味の悪い笑みを浮かべながら言った。  そのあまりの不気味さに、俺は声をかけたことを心底後悔した。 「あ、ありがとうございます……!」  だがその老人は確かにその場所を知っていると断言したのだ。 とにかく行かなければ――ッ!? 「ギャアーッ!!! ギャアーッ!!!」 甲高い叫び声を上げながらゴミ捨て場に汚らしく群がってくる真っ黒いカラス。  老人の持つ空気感にすっかり当てられていた俺は、唐突に現れたその存在の威圧感にさらなる恐怖を覚えて反射的にビクっと身を縮ませた。 暑さと恐怖と冷や汗で、もはや全身がグショグショになっていた。 俺はにやけた顔でこちらをジロジロと眺める老人を尻目に、その場を足早に立ち去って再び歩き始めた。  その“会場”はじきに見つかった。 老人から教えてもらった道は結果として正しかった。  会場はビルの立ち並ぶ街道から少し外れた、うらぶれた路地にあった。 ああ、ついに見つけた……!  しかし感傷にふけっている暇はない。 俺は腕章を付けた案内人に一礼して、軽い足取りで古びた雑居ビルの玄関ホールに入った。 ひんやりとした建物内の空気にようやく到着したという実感がこみ上げてくる。 そこで手を消毒し検温を行って問題が無いことを確認する。  俺はひと呼吸ついた後に受検票を確認し、会場として割り当てられた試験室を探し始めた。 会場は入り組んでおり、まるで迷路だった。  行っては戻りを繰り返し、何度目の角を曲がった頃だろうか。 俺はやっとのことで夢にまで見たその場所に辿り着いた。  部屋はこじんまりとした小会議室で、そこにいたのは二人の試験官を含めてもたったの十人ほどだった。 そして俺を除く全員が既に着席していた。 受験者たちは互いに興味もないのか皆無表情で、まるでこれから説教でも受けるかの様に俯き加減で与えられた座席に腰を下ろしていた。  俺も着席する。  空気が重々しい。何て重圧だ……  そうしているうちに10分ほどが経った。試験開始まであと20分……10分……全員が口を開くどころか身じろぎひとつせずそこでジッとしていた。  集中、集中だ……! かき乱れる心を何とか落ち着かせようと必死で精神を統一する。  恐怖、不安、緊張、焦り……何が何だか分からない感情がない交ぜになり全身からもうもうと湯気が立ち昇る。  しかしそのとき俺は気付いた。気付いてしまった。 ああ、あああ…… 「アッアッアッアァーーーーッ!!!」  俺は思わず立ち上がって絶叫した。  会場の全員がビクッとなる。  俺……俺はァ……恐怖と緊張のあまり[ピー]……[ピー]していたのだァッ! しかも大分前からだッ!!!  渋面を作りながら恐る恐る、それでいてゆっくりと試験官が近付いてくる。「キ、キミ……今すぐに会場から退出しなさい。さあ、早く……急ぐんだッ!」  ……クッ……道理で皆……!   ああ、上級…… 何て……何て恐ろしいんだ…… 俺には…… 俺にはまだ早すぎたんだァーッ! おわり。 …………………………………………………………………………… コレは2022.02.09に投稿したもののアレンジです ↓修正後 [掌編]□□□□□□□□□□□□□□を□□してきたぜ! - 2023.02.05 / 1,581字  ある夏の暑い日。  俺は目的地付近で電車を降り、駅前で地図を眺めていた。  ここだ。  この近くにある筈なんだ……  雲一つない空は日差しがとても厳しく、その暑さは朝の8時過ぎだというのにただ立っているだけで体力がガリガリと削られる程だった。  とにかくさっさと辿り着きたい。その一心で俺は目的地を探して歩き始めた。  ――おかしい。  じりじりと照りつける太陽。吹き出す汗。  いくら歩いても一向に地図の場所に到着する様子がない。  たまりかねた俺は、通りすがりの老人をつかまえて道を尋ねた。 「キシシ……ああ、あそこだね……ああ、ああ、知っているとも。  お兄さん、あんたは本当に運がいいよ……ほ・ん・と・う・に、ねぇ。キシシ……」  地図を見た老人は思わせぶりにゆっくりと顔を上げ、薄気味の悪い笑みを浮かべながら言った。  そのあまりの不気味さに、俺は声をかけたことを心底後悔した。 「あ、ありがとうございます……!」  だがその老人は確かにその場所を知っていると断言したのだ。  とにかく行かなければ――ッ!? 「ギャアーッ!!! ギャアーッ!!!」  甲高い叫び声を上げながらゴミ捨て場に汚らしく群がってくる真っ黒いカラス。  老人の持つ空気感にすっかり当てられていた俺は、唐突に現れたその存在の威圧感にさらなる恐怖を覚えて反射的にビクっと身を縮ませた。  暑さと恐怖と冷や汗で、もはや全身がグショグショになっていた。  俺はにやけた顔でこちらをジロジロと眺める老人を尻目に、その場を足早に立ち去って再び歩き始めた。  その“会場”はじきに見つかった。  老人から教えてもらった道は結果として正しかった。  会場はビルの立ち並ぶ街道から少し外れた、うらぶれた路地にあった。  ああ、ついに見つけた……!  しかし感傷にふけっている暇はない。  俺は腕章を付けた案内人に一礼して、軽い足取りで古びた雑居ビルの玄関ホールに入った。  ひんやりとした建物内の空気にようやく到着したという実感がこみ上げてくる。  そこで手を消毒し検温を行って問題が無いことを確認する。  俺はひと呼吸ついた後に□□票を確認し、会場として割り当てられた□□室を探し始めた。  会場は入り組んでおり、まるで迷路だった。  行っては戻りを繰り返し、何度目の角を曲がった頃だろうか。  俺はやっとのことで夢にまで見たその場所に辿り着いた。  部屋はこじんまりとした小会議室で、そこにいたのは二人の□□官を含めてもたったの十人ほどだった。  そして俺を除く全員が既に着席していた。  □□者たちは互いに興味もないのか皆無表情で、まるでこれから説教でも受けるかの様に俯き加減で与えられた座席に腰を下ろしていた。  俺も着席する。  空気が重々しい。何て重圧だ……  そうしているうちに10分ほどが経った。  □□開始まであと20分……10分……全員が口を開くどころか身じろぎひとつせずそこでジッとしていた。  集中、集中だ……!  かき乱れる心を何とか落ち着かせようと必死で精神を統一する。  恐怖、不安、緊張、焦り……何が何だか分からない感情がない交ぜになり全身からもうもうと湯気が立ち昇る。  しかしそのとき俺は気付いた。気付いてしまった。  ああ、あああ…… 「アッアッアッアァーーーーッ!!!」  俺は思わず立ち上がって絶叫した。  会場の全員がビクッとなる。  俺……俺はァ……恐怖と緊張のあまり[ピー]……[ピー]していたのだァッ!  しかも大分前からだッ!!!  渋面を作りながら恐る恐る、それでいてゆっくりと□□官が近付いてくる。 「キ、キミ……今すぐに会場から退出しなさい。さあ、早く……急ぐんだッ!」  ……クッ……道理で皆……!  ああ、□□……  何て……何て恐ろしいんだ……  俺には……  俺にはまだ早すぎたんだァーッ! おわり。 … … … … … … コレは2022.02.09に投稿したもののアレンジです。 ========================== 2023.08.19 試験前日になってググリ始めた人用になろうに掲載したもの 1,564字  ある夏の暑い日。  俺は目的地付近で電車を降り、駅前で地図を眺めていた。  ここだ。  この近くにある筈なんだ……  雲一つない空は日差しがとても厳しく、その暑さは朝の8時過ぎだというのにただ立っているだけで体力がガリガリと削られる程だった。  とにかくさっさと辿り着きたい。その一心で俺は目的地を探して歩き始めた。  ――おかしい。  じりじりと照りつける太陽。吹き出す汗。  いくら歩いても一向に地図の場所に到着する様子がない。  たまりかねた俺は、通りすがりの老人をつかまえて道を尋ねた。 「キシシ……ああ、あそこだね……ああ、ああ、知っているとも。お兄さん、あんたは本当に運がいいよ……ほ・ん・と・う・に、ねぇ。キシシ……」  地図を見た老人は思わせぶりにゆっくりと顔を上げ、薄気味の悪い笑みを浮かべながら言った。  そのあまりの不気味さに、俺は声をかけたことを心底後悔した。 「あ、ありがとうございます……!」  だがその老人は確かにその場所を知っていると断言したのだ。  とにかく行かなければ――ッ!? 「ギャアーッ!!! ギャアーッ!!!」  甲高い叫び声を上げながらゴミ捨て場に汚らしく群がってくる真っ黒いカラス。  老人の持つ空気感にすっかり当てられていた俺は、唐突に現れたその存在の威圧感にさらなる恐怖を覚えて反射的にビクっと身を縮ませる。  暑さと恐怖と冷や汗で、もはや全身がグショグショだ。  ああ、俺は何て場所に来てしまったんだ。  にやけた顔でこちらをジロジロと眺める老人。  俺はその目から逃げ出すように急ぎ足で歩き始めた。  ——幸運なことに、その“会場”はじきに見つかった。  老人から教えてもらった道は結果として正しかった。  会場はビルの立ち並ぶ街道から少し外れた、うらぶれた路地にあった。  ついに……ついに見つけた……!  しかし感傷にふけっている暇はない。  俺は腕章を付けた案内人に一礼して、軽い足取りで古びた雑居ビルの玄関ホールに入った。  ひんやりとした建物内の空気にようやく到着したという実感がこみ上げてくる。  そこで手を消毒し検温を行って問題が無いことを確認する。  俺はひと呼吸ついた後に□□票を確認し、会場として割り当てられた□□室を探し始めた。  会場は入り組んでおり、まるで迷路だった。  行っては戻りを繰り返し、何度目の角を曲がった頃だろうか。  俺はやっとのことで夢にまで見たその場所に辿り着いた。  部屋はこじんまりとした小会議室で、そこにいたのは二人の□□官を含めてもたったの十人ほどだった。  そして俺を除く全員が既に着席していた。  □□者たちは互いに興味もないのか皆無表情で、まるでこれから説教でも受けるかの様に俯き加減で与えられた座席に腰を下ろしていた。  俺も着席する。  空気が重々しい。何て重圧だ……  そうしているうちに10分ほどが経った。  □□開始まであと20分……10分……全員が口を開くどころか身じろぎひとつせずそこでジッとしていた。  集中、集中だ……!  かき乱れる心を何とか落ち着かせようと必死で精神を統一する。  恐怖、不安、緊張、焦り……何が何だか分からない感情がない交ぜになり全身からもうもうと湯気が立ち昇る。  しかしそのとき俺は気付いた。気付いてしまった。  ああ、あああ…… 「アッアッアッアァーーーーッ!!!」  俺は思わず立ち上がって絶叫した。  会場の全員がビクッとなる。  俺……俺はァ……恐怖と緊張のあまり[ピー]……[ピー]していたのだァッ!  しかも大分前からだッ!!!  渋面を作りながら恐る恐る、それでいてゆっくりと□□官が近付いてくる。 「キ、キミ……今すぐに会場から退出しなさい。さあ、早く……急ぐんだッ!」  ……クッ……道理で皆……!  ああ、□□……  何て……何て恐ろしいんだ……  俺には……  俺にはまだ早すぎたんだァーッ! おわり。 前日になってググり始めた人用に一昨年うpした奴をちょいと手直ししてみたぜ…… 以上! …… …… …… …… …… …… ……
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