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エピローグ
あれから、四年の月日が経った。
「相変わらず、人気者ですね」
ケイルはそう笑いながら、持ってきた花を添える。
ここにある石にはある文言が刻まれていた。
「救国の英雄にして女神の代心者 レティア・フロウリア ここに眠る」
レティアは盛大な国葬が行われた後、ここで眠っている。
いつも誰かがここを訪れ、四年経った今も、花が絶えることはない。
今、ケイルは避龍隊の指導者として働いていた。
もう、彼女のような人を出さない為だ。
ケイルは、文字が刻まれた石をひと撫ですると、とある場所に向かった。
例の湖だ。
夕陽が沈む光景を見ているケイルの横には、当然レティアの姿はない。
「とぉーたぁ!!」
声が聞こえてきたかと思うと、ケイルの足にぶつかる勢いで、小さな女の子が抱きついてくる。
メイアは姉の事を知り、後悔と自責の念で一時は危ない状態だったが、無事に女の子を出産した。彼女は姉の名前を付けたがったが、止めたのはケイルだ。
レティアは、それを望んでいない気がしたからだ。
そして、ケイルが娘に付けたのは…。
「セイール」
セイール…古き女神の言葉で夕陽を表す言葉だ。
この子が、無事で、笑顔を絶やす事なく、一日を終えることが出来る。そんな日を積み重ねる事が出来ますように…。
「あ。かぁーちゃぁ」
メイアの姿を見つけると、セイールは母の元へと走ってゆく。
ケイルは、いつもレティアが座っていた場所を、そっと撫でた。
彼女が残した伝言石はそこに眠っている。
立ち上がったケイルは、湖に架かる光の橋を見つめる。
俺のこの想いは、俺だけのものです。
だから、あなたにも渡さない。
大事に、最後まで持っていきます…。
ケイルは、メイアとセイールと、湖を後にした…。
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