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「いや意味が分かんねーから!窓開けるよ、ホラ換気しろ換気!!!外の空気吸えよ!」
「え、…でも」
無理矢理腕を掴み、窓際に連れて行く。
兄とは違い、突然やってきた積極的且つ騒々しい来訪者に、弟も動揺する。
ガチャッと開けた両開きの窓の前で、晴れ渡る外の景色を眺める。…晴れていても、決して空は青くないのだが。
それでも深緑の森の風景や、小鳥の声とともに、清々しい空気がようやく部屋に流れ込んで来たのを感じると、
「いい天気だね…」
そう言って彼はフードを脱いだ。
サラサラの黒髪がなびく。
兄のように整った、だけどどこか幼さの残る顔立ちを、伊鶴は意外そうに眺める。
「お前…フードとか被ってるからどんな根暗ブサイクかと思いきや、中々綺麗な顔してんじゃねーかよ」
「…」
反応に困ったのか、じっと固まってしまった彼に向かい、
「あーもう、気にすんな!
それより改めて、自己紹介だ。俺の名前は柳瀬 伊鶴だ。よろしくな!」
沈黙があまり好きでない伊鶴は場を盛り上げようと
再度自己紹介をした。
「僕の名前は澪。…一ノ瀬 澪です。よろしくお願いします」
「何だ、ちゃんと話せるじゃねーかよ。安心したわ。ところで何歳だ?」
「14歳です」
「若いな!陣さんが俺と同じで27だから、一回り以上離れてんのか」
思いの外、礼儀正しくしっかり喋ることのできる澪を見て、無駄に悪い予想ばかり巡らせていた伊鶴はほっと胸を撫で下ろした。
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