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タクシーに乗ると、結君は寝てしまった
とにかく体力消耗してるんだなぁ
あ…窓に寄りかかって寝ようとして、右側の頭をぶつけている
「結君、こっちに寄っ掛かっていいよ」
「……あ…すいません……」
ああ……また少し熱が出てるのか
急に外出たりしちゃったもんな
息子に九条の事話してたのか…
「何度かたまたま会って話しただけ」
あの時、九条はそう言ってたけど……
たまたま会った何度かが、お互いにとって忘れられない思い出になってたんだな…
「結君。来てくれてありがとう」
「………ん?…」
この可愛いらしい天使は、皆に幸せを届けに来てくれたのかもしれないな
「……で?どうして、あんな怪我をする事になったんだ?」
なんだってこんなに早い時間にこいつ、ここに居るんだ?
佐久間、仕事どうしたんだよ?
「どうしてって言われても……。朝食食べれそうだって言うからオーダーしに離れたんだよ。で、帰って来たら、転んでて、椅子にぶつけたって……」
「あの子がどんな状態なのか考えなかったのか?離れる前に声掛けたら付き添えただろ」
「伊織…俺はコンシェルジュだ。介護士でも看護師でもない」
「………分かってる」
あれ?
どうしたんだ?
情緒不安定か?
「まあ、とりあえず顔見てやれよ。夜もお粥とゼリー食べてくれたよ」
「……そうか」
「痛み止め飲んだし、また寝ちゃったけどな」
「痛がっていたか?」
「いや、多分痛みに強い子だ。怪我した時も冷静に説明してたし、全然痛そうな顔見せないな」
「そうか……」
そう言って、ベッドに腰を掛け、愛おしそうに頭を撫でる
「佐久間、椅子は変えておけ。少しくらいぶつかっても怪我をしない物だ。如月、子供の手の届く範囲に酒を置くな。置く場所がないのなら酒は置かなくていい。冬の間は、外へ続くドアは鍵をかけておけ」
それって……
「畏まりました」
「……畏まりました」
九条、多分厳しく言った甲斐があったぞ
真剣に向き合う日が来たみたいだ
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