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想定外
ヴヴ…ヴヴ…
「はい。…ああ。……そうか」
佐久間が俺以外に、電話で敬語を使わないのは、如月と九条だけだ
「おい、どうした?おい……」
如月か九条から連絡が入るという事は、おそらくあの子の事だ
「……ああ。……分かった。俺達もすぐに行く」
俺達もすぐに行く?
……病院?
症状が悪化したのか?
「副社長、すぐに九条の病院へ向かいましょう。結君が怪我をしたそうです」
そう言って佐久間が準備を始める
今、怪我と言ったか?
風邪症状が悪化したのではなく?
怪我だと?
「……何だと?」
「結君が怪我をして、九条に相談したら、連れて来いと言ってくれたので、如月と琢磨さんで向かうそうです。私達も早く行きましょう」
怪我?
あの子は、起きてるのもやっとだ
怪我をするような何をしたというのだ?
「………ょう」
あの部屋から出たのか?
九条が連れて来いと言った?
「………?………ょう」
あんなに震えてても様子見ろと言ってた奴が、連れて来いと言う程の怪我?
一体…あの子に何が起きてるんだ?
「伊織!」
はっ…
「あ……なんだ?」
「なんだじゃない。呆けるのは後にしろ。さっさと車に乗れ!」
「あ……ああ、そうだな…車で……病院に…」
どうしたんだ?
まるで頭が働かない
何をすればいいのか分からない
「いいか?車出すぞ?」
「ああ……」
何を考えればいいんだった?
病院に向かって……
あの子の状態を確認して…
どうして、こんな事が起きるんだ?
あそこはセキュリティも万全で、俺の信用の置ける者達しか居ない安全な場所だ
あそこに居れば快適に暮らしていれるはずなのに、次々と想定外の事ばかりが起こる
「伊織、大丈夫か?結君は、転んで、椅子にぶつかったらしい。その際に眉の辺りを切ってしまったようで、圧迫だけでは止血出来なくて、病院へ行く事になったそうだ」
眉の辺り……
あの顔から血が流れてるのか…
「九条も、救急車までは呼ばなくていいが、しっかりタオルで圧迫して来いと言われたから、琢磨さんと病院に向かったが……傷自体は、そんなに大きな物ではないらしい」
血が止まらない程の傷
……痛がってるだろうか
只でさえ、具合が悪いのに…
くそっ
なんで如月は傍に居なかったんだ
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