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病院へ着き急患室へと急ぐ
居た
「如月……どういう事だ?」
事細かく話を聞こうとすると、
「副社長。まずは、手続きを。結君の生年月日など、分かる範囲でも記入なさって下さい」
佐久間にそう言われて、渡された用紙を見る
が……
書ける部分等、ほとんどない
佐久間が持ってきた、あの子に関する報告書を見ながら生年月日や住所等は記入したが、後は、連絡先に自分のものを記入すると、もう、書ける場所はなかった
俺は、あの子の事を何も知らない
隣で佐久間と琢磨さんが話してると、少し縫うと聞こえてきた
「縫う?少し縫うのか?」
「ええ。少し縫えば大丈夫だと、今、九条先生が縫ってくれてますよ」
「……そうか」
傷も痛いのに、眉なんて場所を縫われるのか…
泣いているだろうか?
空白だらけの用紙を見る
想定外……
いや、違う
俺は勝手に知った気になってただけだ
まともに起きてる時に会いもせず、あの子の事が、分かる訳がない
分からない者の何を想定出来るというのか?
俺は、あの子に来るなという手紙も出せず、何をしたかったんだ?
素晴らしい環境を提供出来る大人を見せたかったのか?
あんな子供に、凄い大人だと、立派な大人だと認めて欲しかったのか?
あの子は兄じゃないんだ
俺の事も知らないんだ
そんなものの為に、あの子を振り回してどうする?
しばらくすると、
「おい、入っていいぞ」
九条に呼ばれ、処置室に入ると、右目の上には大きなガーゼ
その周りや髪には、少し血がこびりついている
左腕には点滴がされていた
「……大丈夫なのか?」
「少し切っただけだよ。この辺の血は止まりづらいから縫ったが、大した事はない。ただ、体力が落ちてた所に、痛みと緊張と闘ったせいで寝てしまったがな。お前が心配するから、ついでに点滴もしておいたぞ
「……ああ」
痛みと緊張と……
この小さな体の子は、沢山の不安を抱えて、大きな勇気を持って、俺の元へ来たのだろう……
なのに俺は、向き合う事すらせず、ただ、自分の権力を見せつけ逃げ回り、この子が自ら離れて行くのを待っていたのだ
どうすればいいだろう…
「すまなかった……」
「頑張ったな……」
あと、何を伝えればいいだろう…
俺には今、頭を撫でてやる事くらいしか出来ないのだ
点滴が終わるまで待ってからの帰宅となり、仕事を放り投げて来た俺達は戻る事となった
帰りがけに、如月の顔を見ると、如月が悪くなくても、あいつが1番近くに居ながら、こんな事態になった悔しさが込み上げてくる
「如月……後でゆっくりと話聞くからな」
「さあ、副社長行きますよ!」
出来れば今すぐ話を聞きたかったが、佐久間に急かされ病院を出た
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