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さっさと仕事を終わらせて帰る
その一心で、俺は、物凄い集中力で仕事を終わらせた
「……化け物並みの集中力でしたね」
「いいから、さっさと帰るぞ」
部屋に入り、如月の顔を見ると、ムカムカとしてくる
「……で?どうして、あんな怪我をする事になったんだ?」
「どうしてって言われても……。朝食食べれそうだって言うからオーダーしに離れたんだよ。で、帰って来たら、転んでて、椅子にぶつけたって……」
「あの子がどんな状態なのか考えなかったのか?離れる前に声掛けたら付き添えただろ」
「伊織…俺はコンシェルジュだ。介護士でも看護師でもない」
その通りだ
透哉に全責任なんてない
「………分かってる」
俺が守れなかった八つ当たりだ…
「まあ、とりあえず顔見てやれよ。夜もお粥とゼリー食べてくれたよ」
「……そうか」
「痛み止め飲んだし、また寝ちゃったけどな」
「痛がっていたか?」
「いや、多分痛みに強い子だ。怪我した時も冷静に説明してたし、全然痛そうな顔見せないな」
「そうか……」
痛みに強いのか
泣かなかったんだな
頭を撫でてやる
俺の方がずっと弱いな
そろそろ覚悟決めなきゃな
君にとって、1番いい環境も、人も、ここにはないけれど
君がここを選んでくれるのなら、少しでも君がここに来て良かったと思える環境を作ろう
「佐久間、椅子は変えておけ。少しくらいぶつかっても怪我をしない物だ。如月、子供の手の届く範囲に酒を置くな。置く場所がないのなら酒は置かなくていい。冬の間は、外へ続くドアは鍵をかけておけ」
さあ、始めよう
君と向き合う為の準備を
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