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俺は今、加賀美 彩仁と話してるんだよな?
加賀美 彩仁は1個下の大学3年生で、近い将来加賀美グループのトップに立つ人間で、俺はその秘書になる予定で……
こんな強風の雪の中、山やら木やらを見て綺麗だとはしゃいでるなど、信じたくない
「彩仁、大丈夫か?どうしたんだ?」
俺がそう言うと、彩仁は、
「……佐久間は、綺麗だって思わない?」
そう言って涙を流し始めた
な……何が起きてるんだ?
加賀美の家で何かあったのか?
だから双子も微妙な感じだったのか?
「彩仁、話を聞かせてくれ。とりあえず、ここは風が強すぎる。一旦中へ入ろう」
彩仁は頷き、今度は俺の後を付いて来てくれた
ドアを開け中に入り、適当にその辺に座る
「どうしたんだ?家で何かあったのか?伊織と上手くいってないのか?」
「……上手く…やれなくなった…」
「……伊織、あまり笑わないな?関係あるのか?」
「俺が…悪いんだと思う。俺が…おかしいから。だから、おかしくないように、皆と同じ様にしてきたんだけど……。ちゃんとこの大学入ったし、期待通りの成績だし……」
?
彩仁の言いたい事が分からない
「彩仁も伊織も問題ない成績だろ?それを維持していくのが辛いのか?」
「皆と同じじゃないのが辛い……。なんで俺だけこんななんだろう?だから、すぐ傍に居るのに、伊織の考えてる事が分からないんだ。昔みたいに一緒に笑ってたいのに……。どうしたら笑ってくれるのか……。何が欲しくて、どんな事が嬉しいのか……。きっと俺とは全然違うから……。俺……上手く……生きられないんだ…」
上手く…生きられない?
どう見ても彩仁の方が上手く生きている様にしか見えなかった
自信無さげに彩仁の後ろに立っていた伊織
そんな伊織の前で笑っていた彩仁
笑顔を見せず、最低限の必要な友人と歩く伊織
いつも沢山の人に囲まれて笑っている彩仁
なのに、上手く生きられないと泣いているのは彩仁………
「彩仁……皆と同じじゃないって、どういう事なんだ?よく分からないが、俺には…多分他の皆にも、上手く生きてる様にしか見えない。お前は、ちゃんとやってる。無理してるのなら、少し休めばいい」
彩仁の伝えたい事が分からない
どうしたらいいのか?
何を言ってやればいいのか分からない
彩仁は、静かに涙を流し続け、
「………ああ……そうか……良かった。佐久間ならきっと、伊織を分かってあげられる……良かったよ……うん」
そう言って、少し笑っていた
全然分からなかったが、なんとなく…これ以上話してもお前には分からないだろうと言われたようで…
俺は、彩仁が落ち着くまで、ただ黙って付き添った
落ち着いた彩仁はいつも通りで
「あ、俺この時間講義だったんだ。またサボっちゃったなぁ」
と笑っていた
「加賀美の御曹司が、あまりサボるなよ」
「ははっ。ちゃんと進級して4年で卒業するから心配すんな」
「当たり前だ」
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