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部屋に戻ると、結君が泣いていた
「何事だ?」
「いや、そろそろ俺が離れても大丈夫かなぁと、少し離れたら泣き出しちゃった。分かったよ。一緒に寝てようね」
そうして如月が戻ると、安心して眠り出す
眠り出したと思って、如月が離れようとすると泣き出す
如月は諦めて、一緒に横になった
日付が変わる頃伊織が来た
自分で遠ざけてきたというのに、如月が傍に居るのが不愉快らしい
まるで都会にそぐわない、こんな小さな子が、たった1人で出て来て、ここに1人置かれ、こちらの管理不行き届きでこんな事態が起きてるというのに、気になるのはそこか?
挙げ句、無理矢理如月を避けさせ、結君を泣かせている
分からないにも程がある
分かろうとすらしていない
俺が少しきつく言ってやると、ようやく傍へと向かう
如月も、かなりムカついているようだ
それでも何だかぐちぐち言っていると、うっすらと目を開けた結君が、伊織の手を握り、満足そうに眠った
九条を迎えに行き事情を説明する
九条は大学時代、僅かに彩仁と交流があったようだ
如月とも伊織とも交流のある九条が、彩仁の事をどこまで知っていたのかは知らないが、亡くなった事は知らなかっただろう
九条には、伊織が何をしたいのか、何をしようとしてるのか分からないらしく、聞いてきた
全くその通りだが、恐らく、伊織自身も分からないのだろう
翌日、関連会社の視察の帰り、伊織がマンションに寄りたいと言ってきた
聞き間違いかと思った
昨日、九条が何か話してたようだったが、それで何か思うところがあるのだろうか…
熱が上がり始め、震えている結君を見ると、大袈裟に騒ぎ出した
俺も如月も説明するが、聞く耳も持たず、九条へと連絡する
人が熱を出して震えている所を見た事がなくとも、一般常識として知らないのだろうか?
それとも、この子だからなのだろうか?
今まで見た事もない、優しい眼差しで結君を見て、優しく頭を撫でている
おまけに、また来る、ちゃんと寝てろなどと言っている
何かの演劇を見させられてるのかと思った
どうだ?俺にだって、これ位出来るんだ等と言うのなら、まだ分かる
だが、信じられない事に、その後も、ずっと時計を気にしては落ち着かない
挙げ句、夕方は何時かだの、俺の顔はちゃんと見えてるかだの、まるで別人のようだ
待ちに待った如月からの報告に文句を言い、小さな子供のようだ
こんな伊織を見た事がない
仕事も捗らないので、さっさと切り上げると言っても、反論もしてこない
マンションに着き、見に行くと、結君は、如月の胸の中で、スヤスヤと気持ち良さそうに眠っていた
大層不満そうではあったが、ようやく落ち着いたらしい
伊織がまだ、ごちゃごちゃと言ってくるが、一応知ろうとし始めたらしい
それから3日
毎日結君の元へ顔を出し、眠っている結君の頭を撫でては安心して帰って行った
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