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鬼血。
生まれてこの方、俺の身体に流れ続けている血液。
先祖代々、俺の家系は鬼血だった。普段は人間と同じ生活をしているが、時々生肉を食べなければ、生きていけない。
その中で、最も我々に力を与えてくれる食材。それは人の肉。
このご時世、人の肉を喰らう機会なんてない。俺たちは仕方なく牛や豚の生肉を食べながら飢えを凌いできた。
しかし、もう限界だ。
人肉を喰わなければ、頭がおかしくなりそうだ。
そう思い始めたのが、2年ほど前。俺は現代社会に生きつつ、人を喰う機会を窺いながら、今日まで生きてきた。
そのためには、人としての信頼を得なければならない。警戒心を与えては、人肉を喰らうなんて、到底無理な話だ。
俺は人間界で言う『いい人』演じ続け、人間からの信頼を勝ち得て来た。
もうそろそろいいだろう。
俺は本来、鬼なのだ。その気になれば、人の数倍の力を発揮できる。人を殺めることなんて、実は朝飯前だ。
俺は決意を固め、アパートへと急いだ。
階段を上り、アパートのドアに手をかけた。
すると、ひとりでにドアが開いた。
「おかえり」
中から1人の女が出て来た。
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